「第8回国際平和博物館会議」への日本からの参加者にご支援を

2014年9月19日~22日、ノグンリ(韓国)で開かれる
「第8回国際平和博物館会議」への日本からの参加者にご支援を

平和のための博物館国際ネットワーク(INMP)理事
安斎育郎(立命館大学国際平和ミュージアム・終身名誉館長、立命館大学名誉教授)

 世界には、平和についての博物館が200館ほどもありますが、その3分の1近くが日本にあります。日本は、世界の平和博物館運動の中で、大切な役割を担いつつあります。平和博物館どうしが手を結ぼうと、1992年、初の「国際平和博物館会議」がイギリスで開かれ、その後3年に1度のペースで7回の会議が開かれてきました。そのうち、第3回と第6回は日本で開催され、立命館大学国際平和ミュージアムは成功のために努力しました。

今年は8回目の会議が、韓国のノグンリ(ソウルとプサンの間)の平和公園施設で開かれることになりました。同平和公園は、ノグンリ国際平和財団が運営する施設で、近代的な平和博物館があります。

なぜノグンリに平和公園があるかというと、その理由は「朝鮮戦争」にまでさかのぼります。
「朝鮮戦争」とは、1950(昭和25)年6月25日に北朝鮮軍が38度線から南下したのを皮切りに始まり、その後、アメリカ主体の国連軍や、中国義勇軍も参戦して泥沼化し、1953(昭和28)年7月27日の「休戦協定」で(終戦ではなく)休戦、今日の「南北朝鮮の分断」を招いた戦争です。

開戦からちょうど1か月後の1950年7月25日、アメリカ軍が韓国の住民を無差別に銃撃し、数百人が死亡する「ノグンリ虐殺事件」が起こりました。
その後、被災関係者のねばりづよい活動が続けられましたが、ついに、ビル・クリントン大統領の時代にアメリカが公式に謝罪して和解が成立し、ノグンリ国際平和財団(理事長:チョン・クードゥ博士)が発足、平和公園施設が整備されました。

 2年前、同財団が「第8回国際平和博物館会議」の開催地として名乗りを上げ、「平和のための博物館国際ネットワーク(INMP)」の理事会の正式決定を経て今年の9月開催が決まりました。その後韓国では政権交代がありましたが、国際平和財団のチョン・クードゥ理事長の努力で懸命に準備が進められています。

「メイン・テーマ」は「記憶、歴史的真実、和解を促進する際の平和のための博物館の役割」、日本からも70人以上が参加、多くの人が発表する予定です。

会議言語は、公式には「英語」ですが、日本語でも参加できるよう通訳・翻訳体制を整える必要があります。また、隣国での開催とはいえ、若い学生諸君にはそれなりの経済的負担になります。

そこで、何かとご負担の多い中たいへん恐縮ですが、みなさんのご支援を心からお願いする次第です。

国と国の間には不穏な対立模様が見られますが、この国際会議は私たち平和を望む市民の貴重な国際貢献の機会になるでしょう。

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ご寄付について
◇目的
 2014年9月に韓国で開かれる「第8回国際平和博物館会議」への日本からの参加者に対する移動、翻訳・通訳、報告書作成などへの支援。「日本からの参加者」には、発展途上国などから留学中の学生も含まれます。

◇期間
 当面、ご寄付は2014年7月1日から2014年10月31日まで受け付けさせて頂きます。

◇目標額:300万円

◇決算報告
 決算報告書が整い次第、郵送にてお届けさせて頂きます。

ご寄付の送り先

ご寄付の受け取り口座は、株式会社ゆうちょ銀行の
「アンザイイクロウ」の普通預金口座です。

●郵便局からの振込みの場合
ゆうちょ銀行の口座をもっていてATMを使える場合は「無料」ですが、郵便局の窓口で「振込用紙」で送る場合は「手数料」がかかります。
記号:14440  番号:3883851
口座名:アンザイイクロウ

●銀行などからの振込みの場合(有料)
【店名】四四八(読み ヨンヨンハチ)
【店番】448
【預金種目】普通預金【口座番号】0388385
【口座名】アンザイイクロウ

●安斎育郎(アンザイイクロウ)の住所
〒611-0023
京都府宇治市折居台4-1-84

「第8回国際平和博物館会議」への日本からの参加者にご支援を

「第8回国際平和博物館会議」への日本からの参加者にご支援を

カテゴリー: 平和関連

「美味しんぼ」鼻血問題コメント

『美味しんぼ』鼻血問題コメント

安斎育郎 立命館大学名誉教授(放射線防護学)

鼻血や倦怠感については、福島の方でそうした症状を心配しているという方がいるという話は伝わってきています。そして、それが放射線によるものかの議論がある。ただ、原発事故前の鼻血や倦怠感に関する統計データと今を比べなければ、増えているのかどうかは何とも言えません。具体的な、そういう比較データは承知していない。

  こうした症状は『後付けバイアス』によって出ることが知られています。これは心理学用語で、鼻血が出た、疲れたという症状が出た場合、福島で放射線を浴びたからではないかと考える。今、こんなに疲れているのは、きっと福島に行ったせいだろう、などと考えることはよくあることです。そういうふうに思う方が多く現れることはあり得ると思います。が、これは原発事故によるものだと断じるようなものではないでしょう。

  放射線の影響が、人々にどういう影響を与えるのか。それは、4つのカテゴリーに分けて考えるべきでしょう。①身体的影響、②遺伝的影響、③心理的影響、④社会的影響です。

  このうち、社会的影響というのは、福島に対する差別や偏見、風評被害もそうですし、避難していた人が、これまで掛かっていたお医者さんに通えなくなったり、衛生面の変化や集団生活など環境の変化によっておこるストレスや不眠、食欲不振に陥ったりして死期を早めたりするのもそう。最近では、福島県では原発関連死が震災による直接の死者を越えていますが、これもこの社会的影響によるものです。

  心理的影響については、多くの方々は放射線は浴びないに越したことがないということを知っているので、何かあると福島のせいではないかと考えてしまう。放射線量が通常より高いと知った際に、そういう感じ方をする。さきほど触れた、後付けバイアスもそうです。鼻血が出ると放射線のせいではないかと考える。何かが起きたら、放射線と関連付ける。それがさらに進むと、福島県で採れた食材は、汚染の実態と関係なく「食べない方がいい」と感じる。福島県出身の彼女と付き合うなと家族が反対するというのも、この心理的影響に該当します。

  が、今回の『美味しんぼ』の件を検証する場合には、①②に該当するか否かという問題になります。これは放射線医学とか放射線影響学といった科学のジャンルによるものです。

  結論的に言えば、もちろん個人差もありますが、1シーベルトを超えなければ倦怠感は現れないと考えていいでしょう。毎時ではなく、一度に1シーベルトを浴びた場合です。目安としての、1シーベルトです。1シーベルトは、1000ミリシーベルトであり、100万マイクロシーベルトです。この線量を浴びた人が倦怠感を感じた場合は、放射線との因果関係を疑って構いません。もちろん、倦怠感は従事した労働の強度にも依存しますし、人によって放射線の感受性は違います。もっと低いレベルで倦怠感や吐き気が出る人もいれば、もっと高くないと症状が現れない人もいる。数百ミリシーベルトから1シーベルトの範囲で起こると考えればいいでしょう。目安としての1シーベルトと言えます。

  今回の『美味しんぼ』では福島第一原発を見学した際に、『1時間あたり1680マイクロシーベルト』とありますが、1時間そこにいたわけでもないし、1シーベルトよりははるかに低い被ばくでしょう。

  私自身、毎月福島に行って放射能調査をしています。保育園児や幼稚園児の通園路や散歩道の線量を測り、ホットスポットを見立てて、どうすればいいか提案する活動をしています。南相馬や飯舘、川俣、福島市、二本松、本宮、いわき、郡山などに行っています。その地域にべらぼうに高い被ばくをしている人はいません。もちろん、倦怠感や鼻血の症状が被ばくとの因果関係を示唆するような仕方で出ているとは承知していません。

  また、私は事故の5週間後の2011年4月16日、浜通り沿いに北上し8時間ほど、汚染土の採取や空間線量率分布の測定調査を行いました。それでも被ばく線量は22マイクロシーベルトでした。事故直後でもこのくらいでした。

  原発を見学した方も、短時間でしょうから、僕よりも浴びている線量は低いはずでしょう。

10~20マイクロシーベルトというレベルかなと思います。その数値なら、これまで言われてきた放射線影響学からいえば、倦怠感が残ったり、それが原因で鼻粘膜がやられて鼻血が出るようなことは考えにくい。漫画によれば、鼻をかむと小さな血痕があったと書いてあるから、そんな大げさではないかもしれないけれど。

 相対的に汚染が高かったという原発から60km圏の福島県渡利地区の調査も行いました。渡利地区の保育園の園児90人、保育者20人、そして希望される保護者の方の外部被ばく線量を継続実測調査した。積算線量計というのを配った。行政はガラスバッヂというのを使いましたが、僕はクイクセルバッヂという似た原理のものを使った。寝る時も近くに置いてもらって毎月ごとに測定し1年間測ってもらったんですが、今の状況だと、渡利地区で保育園生活をしている人の被ばくは、1年間で0.2ミリシーベルトいかないぐらいなんですよ。よって、1000ミリシーベルト(1シーベルト)には程遠い。渡利地区にも、鼻血や疲れが抜けないという話は確かにあったが、放射線防護学的に見れば、放射線が直接身体に影響したのではなく、心理的な影響が大きかったのだと思います。

  率直に申し上げれば、『美味しんぼ』で取り上げられた内容は、的が外れていると思います。

今回の事故を受けてやらねばならないのは、まずは原発事故で何が起きたかの解明、汚染水漏れ対策、50年かかると言われる廃炉の方法やそのための労働力の確保、そして10万年かかると言われる高レベル放射性廃棄物処理の問題。なのに原発再稼働や輸出という話が出ている。そうした問題はぜひ、取り組まねばならないと思います。

  そして、これはお願いになりますが、200万人の福島県民の将来への生きる力を削ぐようなことはしてほしくない。僕自身、わが故郷でもある福島の人々をサポートしていくつもりです。被ばくをできるだけ少なくするにはどうしたらいいかと。そういうことからすると、鼻血や倦怠感といった後付けバイアスの可能性が強い部分を強調されるのは状況錯誤だと思います。放射線医学の実態も反映していない。心理的な影響としてはあり得ますが、果たしてその問題が今のメインなのか。それよりも、18歳以下の甲状腺がんの可能性の問題など、取り組まねばならない問題はたくさんある。そういうことを明らかにすることの方が必要だと思います。

  結局、日本人の放射線リテラシーが低すぎるという問題があるでしょう。放射線に関する知識、情報を読み解いて、その危険度がどのくらいかを理解する基本的素養をまったく学校教育その他で就けてこなかった。そのため『放射線を大量に出した原発事故がある福島』と聞いただけでいろんな影響が起きてくることはある。巨大なストレスが生じるような状態になっている。家を放棄して他県に移る人もいるぐらいだから。

  もちろん心理的バイアスだとしても、それに対してはきちっと対応しなければいけないことです。が、これがメインの問題かと言われると、それどころじゃない、もっと重大な問題がある、というのが私の意見です。また、福島の200万人のかたが希望を紡ぐような内容を次は書いてほしいと希望します。

  なお、放射線と鼻血に関しては、具体的なデータは承知していません。倦怠感に関しては研究はあるが、鼻血については知らない。ただ、放射線を浴びると皮膚がやられるのは事実ですから、粘膜が破れれば鼻血が出るわけで、それは皮膚に影響が出るのと同じですから、一定以上の放射線量を浴びると鼻血が出ることはあるでしょう。

  あくまで目安ですが、1シーベルトで倦怠感が出て、3シーベルトで脱毛現象が起こる。5シーベルトで皮膚に赤い斑点。7シーベルトでやけどをします。8シーベルトでは火ぶくれ、ただれが出る。全身に浴びたら、1か月で亡くなる。10シーベルトで潰瘍ができる。イリジウム192という放射性物質を拾ってポケットに入れた人が、尻に潰瘍ができたということもあった。潰瘍が出るのは、そのくらい極端なケースでないと起きません。

カテゴリー: 原発関連

NHK Eテレでの放送(福島プロジェクト)

NHK Eテレの番組の中で、現在ASAPが進めている福島プロジェクトの様子が
少し(どの位かは不明)放映されますので、ご案内いたします。

3月8日23:00~(94分)
ETV特集「ネットワークで作る放射能汚染地図~福島原発事故から3年~」

こちらの番組の後半で、福島のさくら保育園との取り組みが紹介されます。

特に園児の散歩再開に汚染地図を作成した経緯や、
実際に測定してみると環境中に汚染がまだらに存在している点などについて
リポートされているようです。

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平和のための博物館国際ネットワーク(INMP)より 緊急のお知らせです

第8回国際平和博物館会議

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2014年9月19日~22日 第8回国際平和博物館会議が、韓国のノグンリで開かれます。

〈開催日〉 2014年9月19-22日
〈場所〉韓国ノグンリ平和公園(No Gun Ri Peace Park)
〈主催〉ノグンリ国際平和財団
〈テーマ〉記憶、歴史的真実、和解を促進する際の平和のための博物館の役割

発表者を募集中です。

(日本での集約日:2014年3月10日)
英語で報告される方は、下記の INMP のウェブサイトから申し込めます。
The deadline for submissions is 15 March 2014
http://inmp.net/index.php/events/inmp-conferences/2014-no-gun-ri-south-korea

日本語での発表や申し込みを希望する方は、
「氏名、連絡先、希望の発表形式(口頭、ポスター、パネル討論)、テーマ」を明記の上、下記の方法で申し込んで下さい。
●メール(INMP理事・山根和代氏宛):ky5131jp@fc.ritsumei.ac.jp

メールを使わない人は、下記のいずれかで(「山根和代」宛と明記のこと)
●FAX:075-465-7899 立命館大学国際平和ミュージアム・山根和代
●郵便:〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
立命館大学国際平和ミュージアム気付 山根和代宛

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日本平和学会 第4回平和賞

11月9日 2013年度平和学会秋季研究集会において、安斎所長が第4回平和賞を受賞しました。

11月9日、2013年度日本平和学会秋季研究集会において安斎所長が第4回平和賞を受賞しました。

平和賞受賞

第4回平和賞 授賞式。


11月9日 2013年度日本平和学会秋季研究集会において、安斎所長が第4回平和賞を受賞しました。

平和賞を受賞しスピーチする安斎育郎所長。

日本平和学会平和賞とは(学会のHPによる):
「日本における平和研究、平和運動において大きな貢献をした団体および個人の功績を称え、平和運動、平和研究のいっそうの活性化を期し、日本平和学会平和賞・平和研究奨励賞が設定されました。授賞は2年に1度となります。」
http://www.psaj.org/

11月9日(土)日本平和学会秋季研究会において授賞式が開催され、受賞理由は以下のようでした。

「安斎氏は放射線防護学の専門家として1960年代から原子力発電の危険性を説く講演活動を行なうなどしたため、さまざまなアカデミックハラスメントを被りながらも、真摯な研究姿勢を貫き、平和研究、平和運動および平和教育の分野で顕著な貢献を果たしてきた安斎氏は、立命館大学国際平和ミュージアムの第2代館長および名誉館長として数多くの先駆的な試みを手掛けるとともに、同ミュージアム、沖縄平和祈念資料館、長崎原爆資料館、広島平和記念資料館、川崎市平和館などから成る日本平和博物館会議に1994年以来欠かさず参画し、平和博物館の連携強化に重要な役割を担ってきた。

また、長崎原爆資料館開設時の監修作業や広島平和記念資料館の改修計画への協力など日本国内の平和博物館の運営に積極的に関わり、さらに、平和のための博物館国際ネットワーク(International Network of Museums for Peace)諮問理事および南京国際平和研究所・名誉所長を務めるなど、国境を越えて平和のための活動を牽引してきた。

平和を推進する安斎氏の活動の幅員は広く、学術的貢献はもとより、原水爆禁止世界大会議長、憲法9条・メッセージ・プロジェクト代表、原爆忌全国俳句大会実行委員長など多岐にわたり、さらに、フィールドワークや講演をはじめとする市民向けの活動を精力的かつ持続的に行ってきている点も特記される。平和ならざる事実を知り、その原因を知り、その克服の道を学ぶこと以上に、「状況に働きかけてそれを変革する主体を育む」ことの重要性を説く安斎氏の信念が、そこに鮮明に反映されている。

近年にあって特筆されるのは、2011年3月11日に勃発し、いまだ収束を見ない福島原発事故後の活動である。安斎氏は、放射線防護学者として、政府関係の活動に従事する以上に、福島市での除染や食料汚染検査、外部被曝測定、相談活動など被災者に寄り添うことに心を砕き、避難所での講演や放射線被曝・がれき処理などに関する市民からの問い合わせにも積極的に応じてきた。暴力なき世界を構想する平和学にとって、原発は喫緊の重大な課題にほかならず、安斎氏の揺るぎなき精神に裏打ちされた活動は、平和学の最も先端的な実践というべきものである。
高度の専門的知見を、暴力なき世界の実現に振り向ける安斎氏の長年にわたる活動が平和運動および平和研究に果たした貢献は顕著であり、日本平和学会は、その活動を称え、同氏に第4回平和賞を授与する。」

平和賞受賞スピーチ

平和賞受賞スピーチ


平和賞 賞状

日本平和学会平和賞 賞状

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公開講座『アジアの平和に向って』

立命館大学国際平和ミュージアムで下記の公開講座を開催致します。

****公開講座****

アジアの平和に向かって—東アジア共同体(EAC)の展望と平和研究の課題—
【ヨハン・ガルトゥング博士とモンテ・カセム館長の対話】

日時:2013年4月23日(火)15:00~18:00(14:30開場)
会場:立命館大学国際平和ミュージアム 2階会議室
対談:ヨハン・ガルトゥング博士(平和学者)
  モンテ・カセム 国際平和ミュージアム館長 学校法人立命館 総長特別補佐
通 訳:西村 文子氏
司 会:山根 和代 立命館大学国際平和ミュージアム副館長
使用言語:英語 日本語への通訳あり(逐次通訳)

定 員:50名 申し込み不要・先着順・聴講無料
主 催:安斎科学・平和事務所、立命館大学国際平和ミュージアム
問合せ先:〒603-8577 京都市北区等持院北町56-1
℡075-465-8151 FAX:075-465-7899

画像をクリックするとPDFページが見られます。
 ↓
ガルトゥング×カセム対談

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貴道裕子コレクションの感動

 年明け早々、「ジェイアール京都伊勢丹」7階の美術館「えき」KYOTOに出かけました。折から開催中の「てっさい堂」貴道裕子(きどうひろこ)コレクション「美しき日本の小さな心─豆皿、帯留、ぽち袋」を鑑賞するためです。
 同館は「企画展専門の美術館」で、幅広いジャンルの展覧会を開催しており、私も折にふれて訪れます。新春企画は「てっさい堂」という骨董品店を営む貴道裕子さんのコレクションで、江戸時代中・後期を中心とする膨大な数の豆皿や帯留やぽち袋を紹介した一種の民俗博物展。まさに、貴道さんの著書『手のひらにのる骨董』の世界そのもので、「小さきもの」に心動かされる貴道さんの「豊かな感性」と「確かな目」の集大成です。手のひらサイズの空間に、人間の無限の想像力と創造力が躍動している、とても刺激的な展覧会でした。私は、日本文化の深さや豊かさに改めて深く感じ入り、とても感動しました。
 江戸中・後期にこのような文化が爛熟し得た背景には、社会が戦乱にまみれていなかったということも大きいと思います。昭和の「十五年戦争」の時代には、伝統的な文化の担い手たちも戦争に動員されていきましたし、国際的にみても、ポル・ポト政権下のカンボジアでは、伝統的な文化を破壊するために知識人が大量に抹殺されたと言われます。平和は「文化を育むための重要な必要条件」に違いありません。

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マックス・ウェーバーの「教壇禁欲」について

2012年10月28日、立命館大学で第24回日本生命倫理学会(大会長:立岩真也・立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)が開催され、私は、特別講演「福島原発事故と生命(いのち)――研究者の倫理を考える」を担当しました。大会実行委員会は、私が40年程も前、国が地震列島の電力生産の担い手として原子力発電を位置づけ、この「生命に深く関わる技術利用」を国家政策として大規模に推進する中で、私が、さまざまな抑圧に抗しながら、自ら信じるところに従って原発政策批判に取り組んだ事実に目を向けたようです。
 この問題は基本的には「科学と倫理」あるいは「科学と価値」の問題であり、「科学者と価値観」「科学者と倫理観」の問題です。この日の講演で、私は、「今日の話の枠組みは、19世紀後半から20世紀にかけて生きたドイツの経済学者・社会学者マックス・ウェーバー(マキシミリアン・ヴェーバー、Karl Emil Maximilian Weber)が設えた土俵をあまり出ないだろう」と述べました。それは、私がマックス・ウェーバーの影響を受けたというよりは、私が人生の途上で出くわした様々な自然現象や社会現象について考え、加藤周一さんなどとも対話しながらある時点で心の中を整理したら、まあ、それがマックス・ウェーバーが設えた土俵と似たものだったということなのです。
 ウェーバーと同じように、私は、「真偽の判断が人の好み(価値観)に依存しないような命題(例:2+3=5)」と、「それぞれの人の好み(価値観)によって真偽の判断が違い得るような命題(例:ピカソの絵は素晴らしい)」の2種類があると思っています。「命題」というのは、「人間の判断を文章や数式や記号で表したもの」のことです。前者は「客観的命題」、後者は「主観的命題」と言ってもいいでしょうが、私は「科学的命題」と「価値的命題」と呼んでいます。科学的命題の場合は、その命題が「正しいか」「正しくないか」は、判断する人の価値観に依存しません。誰がやっても、どんな宗教を信じていようが、トマトが好きだろうが嫌いだろうが、「2+3」は「5」です。しかし、「ピカソの絵が素晴らしい」と思うかどうかは、好み(価値観)によって違います。どんな絵に価値を見出し、どんな絵に価値を見出さないか、それは人によって違うでしょう。だから、価値的命題の真偽は価値観に依存します。だから、人生には「科学的命題」と「価値的命題」があるという二分法は、私も基本的に採用しています。その意味で、マックス・ウェーバー的なのです。
 しかし、その一方、マックス・ウェーバーが言う「教壇禁欲」という考え方には、とても賛成できないのです。ウェーバーは、平たく言えば、「教壇に立つ大学教員は、自分の価値観をあらわに振りかざすようなことはせず、価値中立的な命題を扱うべきだ」と言うのです。ウェーバーは、当時の大学教授たちが体制擁護的な政治的価値観を振り回していたことに危機感を感じ取ったのでしょう。その気持ちは分かりますが、しかし,われわれ自身が大学教育で価値中立的な命題だけしか扱わないようなら、大学教育を死滅させかねません。誰がやっても同じ結論が出るような命題群を系統的に学習することは勉強になることは確かですが、果たして学問の社会的役割に相応しい生き生きとした教育になるでしょうか?
私は、大学教員が自分の価値観を踏まえて福島原発事故などの同時代の社会現象を論評し、「私ならこう考える」という教員なりの見解を学生たちに語りかけ、学生たちの思考に刺激を与えることについては「禁欲」的である必要はなく、大いに推奨されるべきものであると思うのです。例えば、時代の支配的な価値観が人々を戦争へ戦争へと追いやろうとしているような場合に、それに対して批判的な価値観の立場から講義を展開し、「私はこう考える」という立場を鮮明に訴えかけることはとても重要でしょう。
大学教員が「禁欲的」でなければならないのは、むしろ、そのような自らの価値観を鮮明に打ち出した問題提起に対して、学生が学生自身の事実認識や価値観に基づいて存分に批判する自由を決して抑圧したりしてはならないということでしょう。教員と学生は自ずから知識量も社会経験の豊かさも違うでしょうし、ましてや、教員は、ある意味では、成績をつけて学生に単位を与奪する立場にある「権力者」でもあります。その「権力」を振りかざして学生による自由な批判的論陣に茶々を入れたり、軽蔑的態度をとったり、弾圧したりすることには最も「禁欲的」でなければなりません。
だから、大学教員は、時代の暴力的な価値観について自らの価値観を対置して論評する完全な自由を保証されるべきで、むしろ、「大学の講義では教壇禁欲的であるべきだ」という規範を持ち出してそうした自由を押し潰すことにこそ「禁欲的」であるべきだと思います。
もちろん、教員であれ誰であれ、「科学的命題」についてはその真偽について正確な事実認識を踏まえて論じるべきであり、意図的に「隠したり、ウソをついたり、過小/過大評価したり」することは避けるべきことは言うまでもありません、しかし、福島原発事故についてもそうした原則を踏み外す幾多の事例が見られました。原発政策を推進する側に身を置いてきた大学教授たちが、事故直後のニュース解説番組に登場し、彼らなら当然把握できていたはずの核燃料の溶融の危険性などについて過小に印象づける言説を振りまきました。生命倫理学会でも質疑討論の時間に厳しい指摘がありましたが、原発を推進する政策に身を寄せてきた専門家が事故の深刻さを覆い隠すような言辞を振りまいたことは極めて反倫理的でしょう。また、私の知人である日本大学の野口邦和さんは東京の講演会で、「ECRR(欧州放射線リスク委員会)のクリス・バズビー氏は福島では数十万人が死ぬと言っていますが、先生は何人死ぬとお考えですか?」と問われたそうですが、福島の住民たちの正確な外部・内部被曝線量の把握さえも不確かな時点で、「数十万人が死ぬ」などという結論を導く「科学者」も、被災者を傷つけるだけで、科学的命題に誠実に対応しているとは言えないでしょう。さらに、日本生態系協会の池谷奉文会長は、2012年7月9日に開かれた日本生態系協会主催の「日本をリードする議員のための政策塾」で、「福島ばかりじゃございませんで栃木だとか、埼玉、東京、神奈川あたり、あそこにいた方々はこれから極力、結婚をしない方がいいだろう」「結婚をして子どもを産むとですね、奇形発生率がどーんと上がることになる」と述べたことも、被災者に対する偏見や・差別を助長する非科学的な言辞であり、事実に基づいて科学的命題に誠実に対応する態度とは無縁のものでしょう。
私は、引き続き、科学的命題には出来るだけ正確な事実認識と論理に基づいてそれなりの誠実さで対応するとともに、こうした破局的な事態を招いた背景にあるアメリカの対日エネルギー戦略や日本の政財界の価値観に関しては、私なりの価値観に基づいて批判し、大学の教壇にあっても学生たちに問題提起し、同じ目線で考えて行きたいと思います。

カテゴリー: 原発関連

5月14日NHKあさイチ出演

5月14日(月)放送のNHKあさイチに安斎育郎が出演します。

「新基準から1か月 食品の放射性物質問題は?」というテーマです。

■NHK総合 あさイチ
 5月14日(月)
 午前8時15分~9時54分

ぜひご覧ください。

カテゴリー: 原発関連

ドゥーリトル空襲の日ですね

1942年4月18日は日本本土に初めて空襲があった日。アメリカのB25が16機だったかな、東京・名古屋・四日市・神戸を爆撃しました。

カテゴリー: 徒然日記