「第35回平和のための京都の戦争展」での立命館・吉田総長のスピーチ

 2015年8月4日~9日、立命館大学国際平和ミュージアムを会場に、「第35回平和のための京都の戦争展」が開かれました。私、安斎育郎は、立命館大学名誉教授の岩井忠熊さん、狂言役者の茂山あきらさん、フォークシンガーの高石ともやさん、弁護士の久米弘子さん、物理学者の益川敏英さん(ノーベル賞受賞者)、清水寺貫主の森清範さんらとともに「呼びかけ人」の一人で、8月4日の開会式で、来賓の吉田美喜夫さん(立命館総長、別掲のスピーチ参照)に続いて挨拶しました。

 スピーチの中で、私は、立命館大学国際平和ミュージアムが、35年前に戦争展運動に取り組み始めた市民のイニシャチブと、「平和と民主主義」を教学理念とする学校法人・立命館のイニシャチブを母体として生まれたことを紹介し、現在の日本の状況を考えるとき、「過去と誠実に向き合う」努力がますます重要になっていることを述べました。

 戦争展では、「一兵士の写した中国戦線─村瀬守保さん写真展」「インパール戦従軍医師・中野信夫さんスケッチ展」「ミニシンポ:京都における建物疎開と都市防空の実態(京都外国語短大・川口朋子さん)」など数多くの企画が展開され、多くの人々が訪れました。
 以下、開会式で挨拶された吉田美喜夫・立命館総長のスピーチを紹介します。

「第35回平和のための京都の戦争展」開会式
吉田美喜夫・立命館総長のスピーチ(全文)
(2015年8月4日、於・立命館大学国際平和ミュージアム)

 皆さん、おはようございます。立命館総長の吉田でございます。いよいよ「第35回平和のための京都の戦争展」が、本学が運営しております国際平和ミュージアムを会場として開催をして頂きますことに対しまして非常に光栄に思っているところでございます。

私ども立命館では、2006年に「立命館憲章」という憲章を制定いたしました。これはいわば「学園の憲法」に相当する文書であります。その中で、立命館は「平和と民主主義」を教学理念にするということを謳っております。なぜこのような教学理念を打ち立てたかと言えば、ご存じかどうかわかりませんが、戦前の立命館、「禁衛立命」と呼ばれた時代があります。教育勅語に見られる国家主義的な教育というものをこの立命館で進める─こういうことをして参りました。私ども立命館はこのような歴史を深く反省し、これからの立命館は「平和と民主主義」のために教育・研究を進めていくということを決意した次第であります。

そういう私どもの立場から致しますと、昨今の安保法制をめぐる状況というものは、これは極めて深刻な問題をわれわれに問いかけている─こういうように感じております。幸いに、全国の大学人、そして若者が、この動きに対して問題提起している。私はこれに対して、大きく励まされる気持ちでいっぱいでございます。

これからの大学の課題を考えたときに、どこの大学もグローバル化ということを言っております。しかし、言葉は同じでも、どういうグローバル化を進めるのかということはそれぞれの大学が考えていかなければいけない。私どもとしましては、世界で活躍する人材をつくると言ったときに、それは決して戦場に若者を送るというような意味でのグローバルな活躍であってはならない─こういうように決意しているところでございます。現在はなお世界を見渡せば、貧困の問題、さまざまな紛争、あるいは病気・災害、こういうさまざまな問題があふれております。そういう、人類が直面している、あるいはこれから直面するであろうさまざまな問題に取り組んでいる、こういう若者を育てていかなければいけない─こういうように考えているといよいよ始まるこの第35回、戦後70年という節目に開かれるこの戦争展が、戦争の真実を多くの人々に伝え、そして、平和というものを改めて問い直していく─そういう機会となることを、私、立命館総長として念願をいたしまして、挨拶とさせていただきます。有難うございました。

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