ラジオ番組:平和・原発・ひとりごと 2019年10月号

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今日は。
安斎育郎平和原発ひとりごと10月号をお届けする時間になりました。
先月「秋」っていう字の成り立ちについてお話しするところから始まったんですが、秋がそれなりに深まってきた昨今ですね。

先月9月は台風の被害などで大変長期間停電に見舞われた千葉県などがありまして、この国にとってやっぱり災害に対する対策、これはもっと万全でなければいけないっていう気がしますね。
いずれお話しする機会があるかも知れませんが、私は自衛隊っていうのをネーミングを変えて災害救助隊にした方がいいと思っています。戦争で死んだ人はこのところいないので、災害で死んだ人は何万人といるんですよね。
東北の大震災だけでも二万人近い人が命を落としたりしてるので、そういうのに備える専門的な部隊として災害救助隊ってのがあった方が憲法上の問題もないしですね。今の自衛隊の隊員とそれから海上保安隊の隊員などを少し再編成してですね、災害救助隊っていうことにすればいいと思いますね。今の自衛隊だと災害に見舞われた地域の長、県知事なり市長なりが自衛隊に出動要請をしないと出て行けないんですけども、災害救助隊はそれを変えてですね、災害救助隊の総合的な判断からしてこれは災害救助隊が現地に出た方が良いという判断の時には積極的に出て救助救援活動ができるようにした方がいいと私は考えています。

実は先月はですね、私が責任を持って来年2020年の9月にやる第十回国際平和博物館会議の一年前だったもんですから、この時期に台風に見舞われると国際会議も大変だなと思って台風にはちょっと気をくばっておりました。
1960年代に日本列島の回りに台風が5つ並んだこともありましたね。オリンピック台風って言われたんですね。五輪台風てんですね。なかなかやっかいな自然現象で何が起こるかわからないので、そういうことが起こった場合にも慌てずに対応ができるような心構えをしておかなければと思っているところであります。

さて災害と言えばですね自然災害のほかに人為的な災害があるんですね。ごく最近、裁判所で東京電力の経営陣が福島原発数の原因に関わりがあるかどうかをめぐって判決が出て、取りあえずは経営陣は無罪判決が出されてこれについては被害を被った人々から見て、では一体い誰が責任を取るのかっていうことうんなどをめぐって議論があるところですよね。何とかしなければいけないっていうことでありますが、そういう中でもう一つ厄介な問題は福島の汚染水ですね。ものすごい量の核燃料が溶け落ちて原子炉の下にたまっている。それは冷やさないと溶けて大変な放射能汚染に結びつく恐れがあるってんでそっと冷やしてですね水を注入してるわけですで水を注入してその放射性物質の塊を冷やせばその水の方が汚染するわけですね。

その汚染した水が毎日たくさん出るので、それを取ってそこから放射性物質を取り除いてタンクに貯めるっていうわけですが、どうしても取りきれない、例えばトリチウムって呼ばれる放射能などが残ってる。そのタンクがもうしきい値めいっぱい1000基ぐらいできていて、2022年には、これ以上タンクを作る余地がないっていう、満杯になるんですね。そこでそのトリチウムというのをどうするかですね。これをめぐって、前環境大臣と今度環境大臣になった小泉進次郎さんとの間でちょっとやり取りがあったところですね。

前環境大臣は辞めるにあたって、「もうトリチウムの水は海に捨てるしかないだろうとそれが一番いい」という趣旨の言葉を残したということですけども、それをめぐって早速漁業関係者などから批判があった、「われわれに相談もない上に海に捨てるのが一番いいとかいうのは、風評被害をかき立てるような、そういうものであって、とてもを容認できない」ってわけですね。その仕事を引き継いだ小泉進次郎を環境大臣が、そのことについてお詫びをしたって訳ですね。
お詫びをした時に、記者たちからは、それじゃトリチウムの処理水は海に捨てるのが一番いいのか悪いのか、小泉さんの考えはどうなんだっていうことを聞かれたわけですけども、そのことについては言明しないんですね。
小泉さんはお父さんのDNAを引き継いでるっていうこともあるでしょうけども、言語明瞭ですね。

しかし、内容は不明瞭なことが多いので一体どう考えてるのかわからないな人の方が感情を逆なでするようなことは巧みな言葉でかわしながら、本質についてどう考えてるのかってことをなかなか言わないってわけですね。それはまあ、政治家として雄弁な政治家だってんである種の求められる資質かもしれないけども。
それではですね、事の本質がいつまで経っても何を考えてるのか分かんないままにどっかの行政の委員会か何かでそれを進められていって、結論だけ後で押し付けられることになっては大変だったんで、人々は不安に思っているんですね。

そういう時に今度は、大阪の市長がですね、大阪湾にトリチウム水を排出することもありうるような記者会見をやってたんですね。
これもみんなびっくりしたんですね。もちろん大阪市長はあわててといいますかね、「科学的に安全なものでなければ引き受けない」というふうには付け加えたんですけども。科学的に安全というのはどういう意味かってのは、これまたはっきりしないんですね。
誰か科学者集団がこれは安全であるというふうに判断したらそれは科学的安全性が確認されたものとしてそういう科学的に安全性が確認されたものについては反対いするのは理不尽であって、それはもう海に流そうが、何しようがいいんだっていうことでしょうけれども、私自身が福島に毎月、月1回ペースに近い形で9月に63回目の調査やったんですけど、やっていて感じることは科学だけでは片付かないということはないんですよね。心配だから測って欲しいっていうんで福島の例えば原発から六四十キロ離れているある御宅、そこの家の回りを測ってみると京都市宇治市に住んでるわが家とさしたる違いはないんですね。
違いはないけど、「科学的には別にそんなに気をつかった、布団は外に干さないとか水道の水は一切飲まないとかそういう手立てを講ずる必要なく普通に暮らして大丈夫ですよ」っていうふうには言うんですけども、家のお母さんはですね、やっぱり放射能は恐いっていう思いがあって、数字でこの基準に比べて十分低いから大丈夫と言っても、それだけではですね、納得しないんですね。依然としてお家の倉庫の中には買ってきた水買いに山積されていて、その水で食器を洗ったりい洗濯をしたりなんかするんですよね。だから、われわれが放射線防護学者として科学的には大丈夫ですよって言ったからといって、それでその人が、「ああ、そうなのか」っていって安心するとほど生易しいものではないんですね。
放射線の影響ってのはこれは小泉さんなんかにも心得ていってもらわなきゃいけないけども、放射線についての考え方っていうのは今まではですね、 私が東京大学で半世紀前に習っていたころは「身体的影響」っていうのと「遺伝的影響」っていうのがある。そういうことで言われたんですが実際福島通いを六十回以上もやってみて人々が感じているのは、それに身体的影響は遺伝的影響に対する心配だけではなくてですね、心理的影響それから社会的影響これの方がはるかに大きいんですよね。
だから科学的な意味で大丈夫だって言ってもそれは心理的な影響様や、あるいは社会的影響つまり、今まで住んでたところから避難をさせられたために今まで受けていた医療が受けられなくなったり学校教育が受けられなくなったり、あるいは人間関係が今までと全く違う環境に置かれたりして、そのことがストレスになって健康障害を起こしたりする例がとても多いですね。だからより実際に遺伝的、身体的障害が起こるレベルではないから科学的に安全ですと言っただけではだめでやっぱり人々が心理的な不安あるいは社会的な今までとは違った条件下に置かれることによるストレスそういうのを感じないような、そういう条件作りを被災者とともにやらないとですね、これは科学を振りかざしてだけでは問題をこじれさせることになりかねないですね。
だから福島で生じた原発のトリチウム処理水これを海に流すって言って大体大阪のような閉鎖系に流すのは、流すにしても問題があるので外洋に流して十分希釈効果を活用するってことが必要ですけれども、そうそういう技術的な問題だけではなくてですね、いきなり主張が科学的に問題なければ引き受けるっていうふうに言明して人々の心を乱すんではなくって、やっぱりそういうな合意形成ができるようにきちっと段取りを踏んでいくってことがとても必要ですね。
特に福島県の漁業関係者はもう今まで漁業を通じて風評被害にさんざん悩まされてきているんですね。やっとそれがおさまりかけてたこの時期にあらためて科学の名においてトリチウム水を海に流すってなことが相談もなくこの声高に対社会的に発信される。権力の座にある人から一方的に発信されるなんてことになると、これはまた風評被害に遭悩まされるような日々が来るのではないかって言って当然のことながら反対するんですね。たとえそれが科学的に正しい結論であっても、それをいきなり圧しつけるのではなくてですね、それによって影響を受けかねない当事者たちときちっと話をしてですね、それでそういう決定の後、何か起こったらどういう対策をとるのかってことも被災者たちとともに共同して手を打てるようなそういう体制しっかり作ってからその解決の道を合意形成を大事にやっていくってことがこの問題ではとても大事なことだろうと思います。

また福島出る調査の結果なども来月もご報告したいと思います。
それではさようなら。

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