川内原発は直ちに停止させるべきだ
2016年4月14日21時半ごろに発生した震度7の地震に始まり、熊本県を中心に強い揺れを起す地震が続いている。震度7の同じく直下型地震であった阪神・淡路大震災のときの恐怖の感覚が私の身中によみがえった。しかしあのときは「原発震災」の心配はなかった。今回の熊本地震の場合、地震を起こした活断層の延長上の近くに川内原発(鹿児島県)と伊方原発(愛媛県)がある。
このことの危険性をわれわれはどう考えればいいのか。稼働中の川内原発1・2号機は少なくとも直ちにとめるべきではないのか。NPO法人原子力資料情報室の声明「熊本地震と川内原発に関するコメント――あらたな脅威を引き起こさないために川内原発をとめるべきと私たちは考えます」(2016年4月20日)は、問題の所在を的確に指摘している。
九州電力が川内原発で、この布田川断層帯―日奈久断層帯を震源とする地震としては、マグニチュード8.1のものを想定しています。しかし、震源の距離(等価震源距離)を川内原発から104キロメートルと遠くに設定しているため、地震の揺れの大きさを小さめに見積もっている可能性が高くなっています。布田川断層帯―日奈久断層帯の南西端は川内原発から60~70キロメートルほどの位置とされており、この位置でおなじマグニチュード8規模の地震がおこる可能性もあります。
また布田川断層帯―日奈久断層帯の南西延長上には別の活断層の存在が指摘されており、これらが一連のものとして活動するとさらに大きな地震がより川内原発で近い位置でおこる可能性があり、その場合にはますます大きな揺れにさらされることになりますが、そのような調査・検討は原子力規制委員会の審査ではおこなわれていません。この点だけ見ても、川内原発を停止させてチェックをおこなうというのは十分根拠があると考えます(同様の理由で、この活断層の北東延長部の中央構造線のそばにある伊方原発でも、基準値震動の策定をはじめとする耐震安全性に関する調査・検討もやり直すべきです)。
実際、4月19日21時前には、それまでの震源域より南西部にある八代市(川内原発から北東約80キロメートルに位置する)などで震度5弱の地震が観測された。気象庁は、今後活動域が南西側に広がる可能性について、「全体的にどこで発生するか分からず、予測は非常に難しい。現状では、(南西側に)延びる様子は見られないが、厳重に監視する」(西日本新聞4月20日付)としているのだ。
川内原発第1号機(加圧水型原子炉、89万kw、1986年運転開始)は、2015年8月11日、それまで約2年間続いた「原発ゼロ」に終止符を打つべく、再稼働が強行されたことはまだ記憶に新しい。私はこの「呟々吼々ひろば」に「川内原発の再稼働はなぜ8.11なのか」というコラムを投稿した。一見多くの問題の1つにすぎない原発の再稼働に私は日本の支配階級の強い意志を感じたのである。川内原発の再稼働は、「頼れる『力』としての日本を作る」ことを目指す安倍自公政権の「積極的平和主義」の象徴であったのだ。
現実に熊本地震が発生し、人々の「原発震災」に対する不安はいやがうえにも高まっている。にもかかわらず、原発再稼働の直接の当事者である彼らは責任をとろうとしないに相違ない(責任を感じてさえいないのかもしれない)。しかし、よく考えれば、彼らに責任をとらせるのは、われわれ一般市民の責任なのである。幸い、その手段はわれわれにはまだある。日本社会の変革の突破口は、原発の再稼働に抗し、われわれがより意識的に「脱原発」の態度を明確にすることにあることを、私はあらためて強く感じる。
藤田明史