平和友の会会報「世相裏表」2018年8月号

平和友の会会報「世相裏表」2017年7月号

米朝会談(その2)

気温38度の京都盆地に生きる

 気温というのは、通常、「地上1.5メートルの高さの通風のよい日陰で計った大気温度」のことで百葉箱に入れた温度計を用いることになっていますだから、コンクリートで固められた都市部のカンカン照りで私たちがさらされるあの熱気を直接表すものではありません。日照りのコンクリートの上では50℃を超えることもざらにあります。京都盆地に住む私たちは、今夏、そんな過酷な生息環境に置かれています。観測史上初めて1週間以上にわたって38℃を超えましたが、38℃(摂氏38度)というのは、アメリカなどで用いられている華氏でいうとちょうど100℉ぐらいに相当し、アメリカでも尋常ではありません。実は今、異常な気象条件のためアメリカやカナダでは山火事が多発し、ヨーロッパも熱暑に見舞われています。

 気温と湿度の関係で「体感温度」は異なりますが、それを整理したのが下のグラフです。このところの京都は「著しく危険」な条件下にあります。

 

体感温度と危険度

※出典:アメリカ国立気象局(National Weather Service)の“Heat Safety”より作成

 きっと危険度には「年齢」も関係するに違いありません。「お互い、気をつけましょう」と呼びかける私も78歳、毎日忙しく立ち回っている身を省みながら「ホントに気をつけなくちゃ」と思います。

 

 前回の続き─米朝会談について

前回積み残した問題は、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」が同義語か、という問題です。

超大国アメリカの大統領が朝鮮半島の非核化について語るとき、私はどうしても「ヘビースモーカーの禁煙運動」のように感じてしまいます。この比喩は私が言い出しっぺみたいな気もしますが、国連事務総長も似たような表現で語っていたようにも思います。自分は重度喫煙者でゼーゼーしながら、未成年者に「タバコの火遊びは危険だ」と説き、禁煙の重要性を説く姿は説得力がありません。

「朝鮮半島の非核化」という場合、私は当然「アメリカの核兵器の朝鮮半島への持ち込み禁止」も含まれると確信しますが、河野太郎外務大臣は、「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」は同義語だと言っています。日本には「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という「非核3原則」がありますが、「持ち込ませず」は非核原則の要件の一つです。北朝鮮が核兵器を放棄し、仮に核弾頭やミサイルの生産をやめたとしても、アメリカの核兵器が韓国に持ち込まれていたのでは、「朝鮮半島が非核化された」とは言えないでしょう。

私は、シンガポール会談の開催に重要な役割を果たした韓国の文在寅ムンジェイン)大統領が本当に朝鮮半島の非核化を望むのなら、韓国も「非核三原則」を国家方針とすることを積極的に提起すべきだと思います。日本の「非核三原則」は単に「国是」(=国の基本方針)というだけで、法的拘束力を持ちません。かつて日本にアメリカの核兵器が持ち込まれていたことはいろいろな証拠から明らかですが、平和友の会の学習会でも学んだ通り、アメリカが沖縄返還後も「有事の核持ち込み」を日本側に強く要望していたことが改めて明らかになっています。アメリカは、日本や韓国に核兵器が持ち込まれているかどうかという照会に対しては「肯定も否定もしない」方針をとっていますので、たえず疑心暗鬼が生じる結果を招いています。

トランプ─キム会談に大なり小なり関わった国々は、アメリカ、北朝鮮、韓国、中国、ロシア、日本、シンガポールなどですが、どの国も核兵器禁止条約に加わっていません。アメリカ、北朝鮮、中国、ロシアは核保有国であり、韓国、日本は核保有国アメリカの「核の傘」に依存しています。シンガポールは東南アジア諸国連合(ASEAN)の一員としていわゆる「バンコク条約」(東南アジア非核地帯条約、1997年)には参加していますが、核兵器禁止条約採択では唯一「棄権」しました。棄権の理由は、「核兵器禁止条約は核不拡散条約(NPT)など他の条約を崩す恐れがある」というものでした。あのとき唯一「反対」したのはオランダでしたが、オランダは核抑止政策を安全保障政策の基礎としている国々の代弁者の役割を果たし、「いざというときには核兵器禁止条約よりも核不拡散条約の方が優先する」という主張にこだわりました。核兵器禁止条約では核兵器の使用は禁止されていますが、核不拡散条約ではそうではないからです。つまり、核兵器使用への道を残しておきたかったということですね。核抑止論は核兵器使用の前提の上にこそ成立しているのであって、「使用が禁止されている兵器」には抑止効果が期待できないからです。

これらの国々が関わって「朝鮮半島の非核化」を実現しようという場合、核兵器使用の惨禍を体験した日本が果たすべき役割は本来「根源的」とも言うべき重要性をもっています。

核兵器禁止条約に参加していない日本政府に、同条約を実現する意志がまったくない以上、それを認識している私たち主権者が行動するしかないでしょう。もちろん、アメリカに「忖度」して条約に背を向けている日本政府を主権者の力で変える努力は不可欠ですし、そのために「主権者の主権者意識」そのものを変革する努力も欠かせません。現在世界中で取り組まれている「ヒバクシャ国際署名」を広げる行動は、そのための具体的な方法でもあります。

核兵器をいったん保有した国を非核化することはできるのかと言えば、それには幾多の実例があります。南アフリカ共和国は70年代から80年代にかけて六発の原爆を製造しましたが、1990年にすべて解体しました。旧ソ連の一部だったウクライナ共和国は5000発の核弾頭を受け継ぎ1990年代初頭には世界第3位の核保有国でしたが、1996年までに自主的に放棄し、ロシアに移管しました。同じように、ベラルーシ共和国も領土内に保管されていた81発の核弾頭をすべてロシアに移管しましたし、カザフスタン共和国も受け継いだ1400発の核弾頭を1995年までにロシアに移管しました。これらの3か国はすべて核不拡散条約に加わっており、核兵器を保有していません。ちょっと興味深いことですが、アメリカは旧ソ連諸国の非核化を支援するため、サム・ナン上院議員とリチャード・ルーガー上院議員が提唱した「ナン・ルーガー協同脅威削減計画」を1991年から実施し、130億ドル(当時の1兆8000億円)を投じて7600個以上の核弾頭を解体し、核技術者がテロ国家などに流れないように再就職支援も行ないました。北朝鮮の場合も、この「ナン・ルーガー計画」方式を実施すべきだという主張もあります。

核兵器を保有するかしないかは、一つには「政治的意志」の問題であり、二つには「技術的力量」の問題です。北朝鮮は核兵器を製造する「技術的力量」をもつことを実証しましたが、仮に「技術的力量」をもっていても「核兵器を持たない」という「政治的意志」が確固としていれば核兵器を封じ込めることが可能であることは歴史的にも実証済みです。

ただ、当事国間に不信感や先行き不透明感がある状況の下では、非核化のプロセスを当事国任せにするというわけにはいかないでしょう。私は、「核兵器禁止条約」に賛成した国々やNGOが「朝鮮半島非核化監視会議」のような仕組みをつくり、国際的な監視の下でアメリカや北朝鮮に誠実な約束履行を求めていくことが必要ではないかと思います。そのことは、朝鮮半島の非核化を「ヘビースモーカーの禁煙運動」をこえた普遍的な営みとして進めていくためにもきっと役立つはずだと確信します。