悪夢――五輪最終プレゼンにおける安倍首相の発言に関して

福島第一原発の状況に関して、安倍首相は次のように発言した。「私は約束する。状況はコントロールされている。東京にダメージを与えることはない」と。私は非常な違和感をもった。その映像は私にとって悪夢のようであった。福島第一原発事故の状況を一つの社会現象として見るとき、この事故に起因して、10万人もの人々が住居を追われ、避難生活を余儀なくされているというこの一事をとってみても、「状況はコントロールされている」とはとうてい言えないに相違ないからだ。私はこの国の首相に次のように言ってほしかった。

2020年のオリンピックの誘致から東京は辞退する。「東京は世界で最も安全な都市の一つだ」とは残念ながら言うことはできないからだ。事故を起こした福島第一原発の廃炉にこれから数十年の苦闘をわれわれは強いられることになる。人体を含めての自然環境への事故の影響は極小化されなくてはならない。こうした過酷な事故を起こした国の最大の責任者として私は世界の人々に謝罪をする。そして約束をする。平和で持続可能な脱原発社会の創造に日本は挑戦する、と。この目的の達成のために、世界の人々の協力を衷心から願う。そして数十年後、われわれは再びオリンピックを東京に誘致したい。その時にはわれわれは自信をもって言えるだろう――「東京は世界で最も安全な都市の一つになった!」と。

汚染水に関して、「影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロ・メートルで完全にブロックされている」との命題も、事実の検証に――それを行わない場合を除いて――耐ええないであろう。事故は不可逆な現象である。しかし一つの社会的決定は人々の意思によって元に戻すことができる。一国の首相のこうした発言によって、オリンピック開催国の決定それ自体の正当性が問われことになるであろう。この国の首相の責任は重いといえよう。

                                  2013.9.12 藤田明史

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